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放射線とは何か? あらためて放射線について考えてみる!

福島第一原発の事故以来、放射線はとても扱いが難しく怖いもだという、私たちの放射線、特に被ばくに対する意識が格段に高まりました。

確かに放射線は人体に有害なとても怖いものです。また、目に見えるものでもないため、より恐怖心をかきたてられます。

しかし、放射線自体はとても便利なもので、私たちの生活には欠かせないものでもあるのです。

そこで、「放射線」とはどのようなものか?をあらためて考えてみたいと思います。

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医療に必要不可欠な「放射線」!

私たちが一般的に呼んでいる「放射線」は、法令的には「電離放射線」のことを指します。放射線には、「目にも見えない」「物質を透過する」「感じることもできない」「物質を電離する」といった様々な特徴があります。

ここに挙げた「物体を透過する」「感じることができない」という特徴は、医療においてとても有益です。

皆さんもレントゲン撮影を受けられたことがあるかと思いますが、放射線を使ったレントゲン撮影は、何の痛みも感じることなく、人体の中を詳しく見ることができ、病巣を見つけることができます。

そのため、放射線は医療にとってはなくてはならないものの1つでもあるのです。

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モノの検査にも使われる「放射線」

物質を透過する」という放射線の特性は、「人」の検査だけでなく、電子機器や工業製品など様々な「モノ」の検査にも使われています。

皆さんの身近なものの1つであるスマートフォンも、CPUや基盤といった精密部品をX線で検査することにより、高い品質が保たれているのです。

最新のスマートフォンは繊細な加工が採用されているため、少ない放射線量でも簡単に壊れてしまうことがあるらしく、放射線量が100mGyを超えると壊れることがあるようです。

人間の検査では100mGyでは影響がないことが知られていますから、スマートフォンは人より放射線に対するの抵抗力が弱いようですね。

また電子機器などの「モノ」以外でも、異物の混入がないか食品の検査においてもX線が用いられ、食の「安心・安全」に寄与しています。

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放射線と紫外線の違い

上にも書きましたが、放射線の大きな特徴の1つに「物質の電離」があります。放射線を受けた物質の中では、プラスの電荷をもった物質とマイナスの電荷をもった物質が作られます。

電離により数々の化学変化が生じ、色素は分解されて脱色します。身近なものではカーテンが良い例です。カーテンは何年も使用していると、日光に含まれる紫外線によって脱色します。紫外線は放射線よりごくわずかにエネルギーの低い電磁波で、物質を電離する能力をもっています。

では、紫外線と放射線はどう違うのでしょうか?

紫外線は物質に当たると電離が生じますが、ここで発生したマイナスの電荷の電子はエネルギーは小さく、他の物質に当たっても電離が起きません。

一方、放射線はエネルギーが大きいため、電離でできた電子が他の物質に当たるとまた電離が起きます。このようなことが継続的に続くので、物質に与える影響は紫外線より放射線の方が大きくなります。

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放射線が当たるとどうなるのか?

放射線に人体に当たると何が起きるのでしょうか?

前述してように、放射線は人体を透過します。しかし、すべてが通り抜けるわけではありません。通り抜けず人体に吸収された放射線は、体を構成する分子にぶつかり、これを振動させて熱エネルギーに変わります。ごくわずかな部分が体の分子を電離させ、遺伝子にきずを付けたり、重要なたんばく質を分解したりします。

人間の致死線量は8Svほどです。単純に防護量Sv=吸収線量Gyとした場合、GyはJ/kgという単位であるため、体重1kg当たり1J(ジュール)のエネルギーが吸収されたことを意味します。

放射線のエネルギーが体内ですべて熱に変わったと仮定すると、1Jは0.24calとされているので、致死量の放射線を人体が吸収すると体重1kg当たり8×0.24=1.92calの熱が発生します。

1calは水1gの温度を1℃上昇させます。1.92calが1kgに吸収されると0.00192℃の温度上昇になります。致死量の放射線を被ばくすると、体温が0.002℃上昇するのです。たった0.002℃では、体温が上がったと感じることはできませんよね。

真夏に日光を浴びると、どんどん体温は上昇します。放射線と同じ電磁波である日光に比べれば、致死量の放射線といってもごくわずかな熱量でしかないということです。

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放射線を作るには多くの電力が必要!

放射線を発生させるには、どのくらいのエネルギーが必要になるのでしょうか?

たとえば、胸部のX線検査を例に挙げて考えます。一般的に最も線量が少ない管電圧100kVp、管電流100mA、攝影時間0.01秒という条件で撮影すると、皮膚の表面線量が0.05mSvほどになります。

電力は、電圧×電流=W(ワット)でもとめることができます。ですので、この条件では100,000V×0.1Aで10,000Wということになります。

一般家庭で使われる電気は100Vですので、一般家庭で100A使うのと同じ電力ということになります。

一般家庭で契約できる電力は通常60Aまでということを考えると、胸部のレントゲン写真1枚撮影するのに、一般家庭の2軒分ほどの電力を瞬時に使っているということになります。

検診施設などでは、1日に何十枚とX線撮影を行っていますが、実は想像以上に多くのエネルギーを使っていたんですね。