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在宅医療における歯科の重要性①〜訪問歯科の現状と問題点〜

訪問歯科の現状〜口腔ケアがなぜ重要か

はじめに

日本歯科医師会より8020(80歳で20本残存)が提唱されてから20年余が経過し、達成率が25%を超えた。しかし65歳以上の高齢者が占める割合が30%を超え、これからは国の保険、医療、介護政策を無視しては成り立たない。

厚生労働省は年齢別死因実態調査において、90歳を超す高齢者では口腔のケア不良と機能異常により引き起こされる誤嚥性肺炎により命を落とす割合の高さを指摘している。

歯科

今までの歯科医療は外来が中心で、通院困難な患者への対応は一部実施施設による歯科往診か病院、施設などに歯科医療者を配置し対応してきたが、全体から見ればごくわずかであり、その意味で歯科診療所は地域で孤立し、他科との連携に乏しく、現在の社会のニーズに十分に応えることができていない。

また潜在的な患者を多く抱える歯科訪問診療において、「集団は公衆衛生で、個人は医療で行う」という政府の健康政策にも限界が見えてきた。

さらに、診療効率のよい施設のみが受診体制が充実し、診療効率の悪い居宅が見過ごされている実情もある。この集団と個人(施設と居宅)2つへのアプローチを再構成することが重要だと思われる。

歯科医療機能情報の提供や、研修を軸とした地域の受け入れ先としての歯科医療機関のあり方が、今後問われていくだろう。

患者中心の質の高いチーム医療を実践していくためには、専門領域に基づいた医科と歯科の連携が不可欠である。さらに、歯科の設定のない病院では特に、包括的なチーム医療の推進が重要である。

そのために歯科医師、歯科衛生士を常勤、非常勤で配置するための総合施策が必要となる。実際、歯科往診を必要としている患者数は、潜在的なものも含め、加速度的に増加している。

はみがき

真に重要なのは地域ケアマネージャーとの連携

訪問歯科診療で行われる診療内容は、外来で行われるものと同じものと考えられる。

在宅療養をしている患者は義歯の不適合、むし歯に伴う歯の痛みや歯肉の腫れ、口内炎の頻度が高いが、これらの多くは訪問歯科診療で容易に対応することができる。

口腔内の不具合は食欲の低下につながり、口腔清掃状態の悪化は誤嚥性肺炎の原因にもなるので、定期的に訪問歯科診療を受けることが望ましい。その意味では施設入所者は、居宅要介護高齢者に比較して恵まれているといえる。

実際の歯科往診への依頼は、介護施設からが圧倒的に多く、診療所や訪問介護ステーションからは少ないのが現状である。さらに、高齢者や要介護者はハイリスクであり、対応できる歯 科医師も不足しており、大学や地域での研修や 育成システムも同時に求められる。

 現在、在宅歯科医療を時間数を別として、歯科大学29校中4校ではいまだ教育すらされておらず、超高齢化社会への対策としては不十分である。

しかし現場の歯科往診で真に重要なのは、地域ケアマネージャーとの連携である。ケアマネージャーは多忙であり、また待遇も不十分であることから、ストレスと仕事量に忙殺されている。

ケアマネージャーが抱えている要介護者の口腔内のストレスをすべて把握するのは困難だ。したがって、地域が連携し定期的なアンケートを含む洗い出しも重要になるだろう。医療費の問題もあるが、老後、私たちが日本という国でその生涯を安心して全うするためには、必要不可欠な最低限の設備だと思う。

訪問看護

居宅歯科往診の重要性

今までは亡くなるまでの時間を病院や施設で迎えていた高齢者が、現在では安心できる家族や知人の下、住み慣れた自宅で最期を迎えたいと望む世の中になった。

この願いをかなえるべく、生活の拠点を自宅としながらさまざまな介護サービスを受け、健常者に近い満足度の高い生活を求めることは普遍的な願いであり、在宅医療の本質である。

高齢者が優遇される道こそが、次世代の若者にとっても日本の未来に希望がもてるものとなる。

高齢者が求める場所で、生命の根幹である食と、それに付随する楽しみを回復することが歯科往診の使命ではないだろうか。これからの超高齢化社会への歯科医療における現在の課題としては、次が挙げれる。

  1. 施設など歯科医療紹介システムの充実している状況を除き、居宅への歯科医療への要望や潜在的ニーズを引き出す地域ネットワークや、HPなどへの患者や介護側からの能動的なアクセスによる歯科受診
  2. 高齢疾患(誤嚥性肺炎、感染症、低栄養など)を改善し、介護度そのものを軽減
  3. 医療連携を中心としたキュア(治療)からケア(疾病予防)への転換
  4. 地域での介護者向けの口腔ケアの研修(歯科医院や施設での)の実施
  5. 地域介護チームの結成(すべての関連機関 によるカンファレンス)によるケアマニュアル(口腔から全身の)やガイドラインの作成
  6. 在宅療養支援歯科診療所の機能強化
  7. 歯科医療に関するケアマネージャー、介護認定調査員との地域ミーティング

訪問歯科

口腔ケアがなぜ必要か?

医科において、急性期医療は臓器別疾患専門治療と感染予防、栄養管理が行われ、回復期は誤嚥性肺炎の予防と経口摂取の準備にあたり口腔ケアが重要である。

これらを遂行するなかで、歯科部門としては口腔からの感染予防、栄養サポート、接触嚥下、口腔ケアが非常に重要であり、退院後医療が特養、ケアハウス、グループ ホーム、居宅に移行することから、その後のケア連携がさらに重要となる。

また要介護者にとってQOL(Quality of Life:生活の質)が向上する喜び、自分の口で食事をおいしく食べることのできる喜び、家族と同じ食事をいっしょに食べられる喜び、介護者にとって要介護者が元気になる喜びを得られるためには、介護の量が軽減される口腔ケアは、介護を受ける側だけでなく、介護をする側にとっても大きなメリットをもたらす。

本来、歯科的なケアが提供し得る健康度、生活の自立に関する効果は非常に大きいものと期待されるが、サービスを受ける高齢者のニーズがはっきりしない施設単位の訪問診療では、その100%に近い実施率にもかかわらず、必ずしも明確な効果を挙げるには至っていない。

口腔機能の改善は、診療室においても歯科医師の技術に依存するところが大きいが、訪問歯科を担う歯科チームには、診療室とは比較にならないアウェーの条件下で、グループホームでは認知症の高齢者に対応する高度な経験が求められ、比較的認知症の少ない有料老人ホームでも、単純に口腔衛生にとどまらない快適な咀嚼機能の回復など、高齢者の抱える「食べる」「話す」問題を改善し、高齢者の生活の質を改善する高い能力が求められている。


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