時代小説などを読んでいると、当時の病気として「梅毒」という病名がよく出てきます。そのため、「梅毒は昔の病気」と思いがちでが、そうではありません。
確かに、昔流行った病気ではあります。しかし、近年、この「梅毒」に感染する患者数が急速に増加し危機的状況に突入しそうなのです。
増加の一途とたどる「梅毒」
下の図からもわかるように、梅毒の感染者は2011年から徐々に増え始め、2017年12月17日時点では5,534人となりました。これは過去最多の数字です。
図を見ると、2010年では621人でしたが、わずか7年間で9倍に増えています。特に2012年以降、急速に伸び始め、まさに異常事態ともいえる段階に入っています。
厚生労働省による取り組み
厚生労働省もこの梅毒の増加に危機感を抱き、対策に乗り出しています。
2016年からは、美少女戦士セーラームーンとコラボし、「検査しないとおしおきよ!!」とのキャッチコピーでポスターやチラシを作成するなど、啓発活動を行っています。(なぜセーラームーンなのかは不明ですが、病気が病気だけに、タレントや芸能人を起用するのは難しいからなのかもしれませんね。)
また、公開されている「性感染症に関する特定感染症予防指針」にも、梅毒を強く意識した内容が盛り込まれるようになりました。
感染経路
国立感染研究所のホームページにも梅毒に関するコーナーを設け、増え続ける梅毒症例の動向について情報を発信しています。
また、その国立感染研究所から出されている下の図を見ると、異性間の性行為による感染の拡大が、梅毒の流行に拍車を掛けていることが見て取れます。
このグラフでは、男性、女性ともに2012年以降、異性間の性行為による感染と性行為による感染がいずれも増加しています。
特に男性では、2007年以降、同性間での感染が急激に増えています。あくまでも推測でしかありませんが、テレビなどでオネエキャラと呼ばれるタレントが台頭してきた時期と重なるため、もしかしたら何らかの関係性があるのかもしれません。
女性では、特に2014年からは異性間の性行為による感染が急増しています。
先天梅毒児も増加している
同じく国立感染研究所は、「先天梅毒児の臨床像および母親の背景情報」と題した暫定報告を発表しています。
それを見ると、2013年から20歳台を中心とした女性の梅毒報告数が増加しており、それに付随して先天梅毒の報告例も相次いでいます。
2013年に4例でしたが、2014年には10例、2015年に13例、2016年には14例と拡大しています。
さいごに
梅毒の総数が増加すると、非典型例も増えてくることが推測できます。見逃しを防ぐため、初診時など、各診療科において梅毒抗体検査を積極的に行ってもよいのかもしれません。
男性の同性間から異性間感染への拡大、若い女性の異性間感染の急増、そして先天梅毒児の増加傾向と、危機的状況に突入したといっても過言ではないでしょう。
セーラームーンではなく、著名人などを起用し、もっと大々的に啓蒙活動を行う必要があるのではないでしょうか!